kensaku

2014年12月31日水曜日

肛門科の救急



年末年始は病院も長期休診となり、外来患者さんの受け入れは救急体制となる。
肛門科で救急を受け付けている病院はほとんどないと思うが、急に痔が悪くなった患者さんにとっては一大事。
休み明けまで待つべきか、救急病院へ駆け込むべきなのか、『that is the question.

そこで今回は痔の症状に対して、どう判断すべきかの指針をお伝えしたいと思う。
症状だけで病気を確実に判断するのは不可能なので、最終的に心配だったら救急病院にかかっていただきたい。痔の治療は、一般外科でも行っている。

【出血】
肛門から出血する場合、痔核、裂肛が考えられる。痔核は血管が集まった組織なので、肛門から噴き出すように大量に出血することもある。裂肛の場合は比較的出血量が少ないが、それでもぽたぽた垂れるように出血することもある。

いずれにせよ、これらの出血は出続けることはないので、痔の坐薬や軟膏を使って、お酒や激辛料理をやめ、排便の時に強くいきまないように便秘の人は下剤を使うと効果的である。

腸から出血している場合は、出血が腸内にたまると刺激で下痢のように血が出るのが特徴である。出血が続いていれば、大量出血の可能性もあるので、至急病院にかかるべきである。

【痛みと腫れ】
痔核が腫れて痛い場合は、痔の坐薬や軟膏をつけ安静にし、入浴やカイロで温めると効果的である。この場合も酒と激辛は禁止。市販の鎮痛剤を服用するのもお勧めである。

肛門が化膿する肛門周囲膿瘍の場合は対応が違う。この場合の腫れは、なだらかな形の腫れで、しこりの本体は痔核の腫れよりも皮膚の深いところにあるのが特徴である。膿が多く溜まると熱が出ることもある。この場合は至急病院で切開により膿を出し、抗生物質と鎮痛剤の治療で嘘のように楽になる。

以上、代表的な肛門科救急疾患について解説しました。
大腸肛門病学会のホームページにDr.OKがかつて寄稿した【急におしりの腫れた方へ】という迷文があるので、写真を参考にしていただきたい。

2014年12月28日日曜日

【大腸ポリープと癌】


大腸内視鏡検査を行うと、けっこう頻繁に大腸ポリープを見つけることがあります。
大腸ポリープを病理組織検査すると大部分が『線種』と呼ばれる、粘液を分泌する腺細胞が腫瘍化したものです。

線種は良性腫瘍ですから、それ自体は心配ないのですが、大きさが1㎝を超えるくらいになると、腺癌の細胞が含まれるものが出てきます。その細胞が徐々に大きくなって、大腸癌として発症します。
1㎝程度のポリープでは何の症状もありませんから、大腸癌を早期で治療したければ、大腸内視鏡を受けて大腸ポリープを切除するしかありません。

癌年齢に達した方は、一度は大腸内視鏡を受けた方が良いと考えています。
その際、おなかが張る便の調子が悪い肛門から出血がある、などの何らかのおなかの症状があれば、健康保険を使って検査することができ、3割負担のカタで6000円程度です。

2014年9月11日木曜日

【便秘なのに下痢?②】

もう一つ
「少しずつ便が出るのにすっきりしない。浣腸しても便が出ない。」
という症状で忘れてはいけないのが大腸がんです。

S状結腸や直腸のような肛門に近い部位の大腸では便が固まっていますから、大腸がんによって狭くなっていると塊の便が通過することができず『少しずつ溶けて泥のような便が繰り返し出る』という症状が生じます。
それに加えて出血を伴っていると、肛門に最も近い直腸がんんである可能性も高くなります。

そのような症状がある方は、急いで大腸内視鏡検査か注腸造影検査を受けてください。

写真は、注腸造影検査の写真です。矢印の部分の腸(S状結腸)が狭くなっています。


2014年9月4日木曜日

便秘なのに下痢?①

「すっきり出ません。便秘です」
と患者さんが訴える・
「いつから出ていないのですか」
と私が質問する・
「毎日、何回も出ています。下痢なんです」
「???」

このように、下痢便が一日何回も出るのにすっきり出ない場合、一番多いのは『糞便栓塞』である。
要するに、直腸に大きな便の塊ができて、肛門を通過することができず、少しずつ溶けた便が何回も出ているわけである。
患者さんは、便をすれどもすれども便意がなくならず、時には肛門の奥に痛みを感じる。

こんな場合、浣腸をしても効果は期待できず、便を指で掻き出す『摘便』が必要である。
ちなみに院長の奥田は、指が長いので摘便を得意技としている(^^)v

2014年8月28日木曜日

痔瘻における『上皮温存術式』

前方にできる深い痔瘻の手術は、切開解放術を行うと肛門の変形や機能障害を残す恐れがあります。
括約筋を切らずに治す『括約筋温存術式』をさらに進化させて、肛門の中に傷を作らない『上皮温存術式』が最近の話題となっています。


この手術法だと、術後の出血や痛みが少なく、完治するまでの期間を短縮することができます。
説明用のビデオを作成しましたので、興味のある方はご覧ください。
http://youtu.be/HB42D31lvOA

2014年8月9日土曜日

裂肛の手術ビデオをアップしました

裂肛という病気は、9割が薬の治療や排便習慣の改善で治ります。

手術が必要となった場合、主としてSSG法とLSIS法が選択されますが、どちらを選ぶべきか正確に理解していない医師も多いのが現状です。


そのあたりの解説と共に、より術後障害の少ないLSIS法についてビデオを作成しましたので、ご覧ください。
http://youtu.be/q7RZq7thLuo

2014年8月2日土曜日

痔の手術を学びたい人へ

ついにYoutubeに進出しました。
おしりの手術を解説する、世界初?の専門チャンネル
【Dr.OKのまじまじめなおしりのビデオ】
を、御贔屓にお願いします。m(__)m
https://www.youtube.com/channel/UCJGUwuQWpb_N3PWwtNwm4Sg

2014年7月28日月曜日

日帰り手術の麻酔


痔の手術は、一般的に下半身に効く腰椎麻酔が使われるが、術後すぐに動くと頭痛の副作用が現れるので、日帰り手術には使いにくい。

そこで当院では、確実性と安全性を考慮して、局所麻酔を採用しています。
歯科の治療で経験された方も多いと思いますが、手術する部位に直接薬を注射して、痛みを取る麻酔法です。
ただ、肛門周囲という敏感な部位に注射をすると注射自体が痛いですから、その前に点滴を行い(これは、手術中の異変に対する安全装置でもある)その中に、麻酔薬と鎮静剤を入れることにしています。

これによって、局所麻酔注射中からおしゃべりしながら無痛で手術を行うことができます。
あとは、手術中に患者さんを笑わせるくらいの『しゃべくり麻酔』ができるように、休日には寄席に通って勉強しています(^^)v

2014年7月25日金曜日

肛門狭窄の診断は難しい

裂肛(切れ痔)の手術理由に、肛門が狭くなる『肛門狭窄』があります。
傷のある肛門に、指を入れて判断するのだから、考えただけでも痛そう(-_-;)
乱暴に指を突っ込まれたら、誰だって反射的に肛門を締めるじゃないですか。

時々「肛門が狭いから手術が必要だと勧められたのですが…」
と言ってセカンドオピニオンのために来院する患者さんがいます。
肛門の傷に麻酔のゼリーをつけてから、そーっと指を入れると、全く正常な広さの肛門であることも少なくありません。

無麻酔で肛門狭窄の診断をしようなんてことは、無理に決まってますよね。

2014年7月3日木曜日

裂肛の手術適応

裂肛全体からすると、手術になるのは1割程度です。
では、その栄えある?『あんたは手術大賞』になるのは、どんな裂肛でしょう。

一つは、肛門が狭くなってしまって『肛門狭窄』と診断されるもの。
ただ、この肛門狭窄を正しく診断するのが意外と難しい。
痛い肛門に勢いよく指を突っ込まれたら、誰だって緊張して肛門を締めてしまいます。
私は、麻酔のゼリーを肛門内に入れて痛みを取ってから、そっと指を入れて診断します。

二つ目は、肛門から脱出する肛門ポリープを合併している場合。
25年間肛門科をやっていて、一例も治ったためしがありません。
肛門から出たり入ったりするポリープが、傷の治りを邪魔しているからです。

2014年6月29日日曜日

画期的な胃の薬

私は消化器外科出身だから、当然の事として胃カメラもやっている
大腸内視鏡の『運転技術』を駆使すれば、挿入に苦労する事なんてことはない(^^)v
最新の話題は「機能性ディスペプシア」という病気。
胃が痛い患者さんの4割がこの病気だと言われていて、胃が張る、食べるとすぐに満腹になるなどの症状も、この病気の特徴である。

「機能性ディスペプシア」は、腫瘍や炎症があって神経を刺激して痛むというものではなく【胃の動きが悪くて痛みが生じる】というもの。
そもそも、胃の粘膜は痛みを感じないから、胃カメラの時に組織をつまんで検査しても痛くないわけです。

動きの問題だから、いくら胃潰瘍の強力な薬を長い間飲んでいても治るわけがない。
それが1年ほど前にアコファイドという胃の動きを調整する薬が発売されたことによって、何年も胃薬をのんで治らなかった胃の痛みが、嘘のように治るようになりました。

胃が痛くて胃カメラを飲んでも「大したことありませんねぇ」と言われ続けていた患者さんには、奇跡の薬かもしれません。

2014年6月28日土曜日

天気が悪くなるとおしりが膿む

肛門内から便中の細菌が侵入して、肛門周囲に膿が溜まる『肛門周囲膿瘍』は、なぜか天気が悪くなると多くなるという印象を持っている。
ずいぶん前の大腸肛門病学会で『気圧の変化によって、肛門内からの感染が増加する』というような発表を聴いた記憶があるが、その後同様の発表は見たことがない。

でも、確かにこの何日間
「数日前からおしりが痛くなって、今日は座る事もままなりません」
と這うようにしてやってくる患者さんが増え、診察すると見事な肛門周囲膿瘍。
即座に切開排膿すると、すっかり痛みも軽くなったとの事で
「スキップして帰れるでしょ(^^)v」
なんて、冗談を言ってみたりする。

肛門周囲膿瘍の疑いのある方は、今日中に受診して切開排膿を受けないと、地獄の週末が待っるかもしれませんので、要注意。

2014年6月26日木曜日

痔ろうの手術をためらっている方へ

医者から「痔ろうだから手術をしなくちゃダメ。ほっておくと癌になる」と言われたものの、決心がつかない人へ。

痔ろうが単純なもので、いつも膿や汁が出ている状態なら、通常症状は変化しないので、大至急手術しなくちゃいけないという事ではありません。
ただ、膿の出口が塞がってしまうと、膿が溜まって腫れや痛みが生じるので、【爆弾を抱えて】生活しているようなものです。
また、繰り返し膿をためて切開を繰り返していると、時にはあちこちに穴があいた『複雑痔ろう』になってしまい、手術も大がかりなものになり、傷も大きく、下手をすると機能障害が残ります。
また、複雑な痔ろうを何年も放置していると、痔ろう癌が発生します。
痔ろう癌になったら、肛門と直腸を切断し、人工肛門を作る手術を受けなければなりません。

痔ろうになったら「来週にでも手術」しなくてもいいですけど、できるだけ早めに手術を受けましょう。

2014年6月10日火曜日

胃カメラを受けてみよう

女性の癌で一番多い(死亡者数)は『大腸癌』という話が、数年前からよくマスコミで取り上げられていますが、相変わらず多いのが『胃がん』(女性第三位、男性第二位)です。

胃がんを克服するには、とにかく早く見つけること
大腸がんと比べると、せっかちな性格の胃がんは、進行も早いです。
大腸がんの場合、大腸内視鏡を、何もなければ2~3年に一回受ければ治療効果のある段階で見つけることができますが、胃がんの場合は毎年検査をしていないと手遅れになる場合があります。

会社の検診などで、毎年バリウムを飲んでいる人は安心なのですが、最近景気が悪いせいか「定期健康診断から胃の検査がなくなった」という話も聞きました。

病院で保険を使って検査をする場合、『おなかが痛い』、『胃がもたれる』、『胸やけがする』、『食後すっきりしない』などなど、胃の病気を疑う症状があれば、病気として胃カメラを行うことができます。

身に覚えのある方は、ぜひ胃カメラ検査を受けてください。ちなみに、健康保険で三割負担の方なら、7000程度です。
秋葉原サテライトクリニックでは、大腸内視鏡と胃内視鏡を同時に受ける患者さんもいます。

2014年6月9日月曜日

もっとも日帰り手術の適しているのは『後方低位筋間痔ろう』

肛門の後ろ(背中側)に穴があいていて、膿や汁が出る痔瘻です。
たいていの場合は、それに先立って、肛門の後ろ側におできができて、自然につぶれたり、病院で切開した後に、穴が塞がらなくなったものです。
丁寧に触ると、皮膚の上から、穴から肛門の方向に走っているスジ状の硬い痔ろうの管が指先でわかります。

手術法は簡単。痔ろうの管を縦方向に切開解放してやるだけ。
肛門の後ろ側の切開は、浅ければ括約筋の働きを損なう事は有りません。痛みも安静にして痛み止めを飲んでいたら感じない程度なので、日帰り手術に最適です。
もちろん、手術した直後から激しく活動したら、痛みも増すし出血量も増えますから、できれば数日間安静にしていることをお勧めします。

治療費は、3割負担の方で14000円くらいです。

当院では、週末(金・土)も手術可能ですから、有給休暇をうまく使って日帰り手術を受けることをお勧めします。
下記の写真は、典型的な『後方低位筋間痔ろう』です。→の先端に、膿が出ているのが見えます。



2014年6月2日月曜日

痔ろう癌は怖い

肛門周囲膿瘍で、死ぬほど痛い目に合う。
病院で、切開排膿をうけ、膿が一気に出て楽になる。
這うようにしてやってきたのに、帰りはスキップしたくなる。

痛み止めや、抗生物質をもらって、一週間くらいたつと、何のことは無い、治ったみたい。
そんなこんなで病院へ行くのもめんどくさいから、『無かったことにしよう』と思っても、そうはお問屋が…

何か月して、また同じように晴れてきて、死ぬほど痛い目に合う。
今度は違うところから膿が出て、穴の数が増える。

それでも懲りない患者さんは、穴だらけのおしりを放置して、ごまかしごまかししていると、なんだかいつもとは違う痛みに襲われる。
穴から、透明なジェリー状の粘液が出たりする。
これが有名な『痔ろう癌』の典型例。

痔ろう癌であることが判明したら、速攻手術。
それも肛門から直腸まで全部切り取って、人工肛門をつけるという大掛かりなもの。
そこまでやっても、命が助からないこともある。

切開排膿して痔ろうが治ったと思っても、これは『仮釈放』に過ぎません。
異常な症状が再発したら、すぐに肛門科を受診しましょう。

下の写真は、肛門の背中側にできた、痔ろう癌です。


2014年5月29日木曜日

きれ痔(裂肛)の治し方

肛門の中の壁に傷がついて痛みや出血が生じる裂肛は、約9割が薬の治療で治ります。
裂けたばかりの浅い傷は便を柔らかくして軟膏を浅く注入することで早ければ1週間で治りますが、慢性化して傷が深くなったり肛門が狭くなってしまうと手術が必要になってきます。


排便時に「ピリッと痛い」という症状があったら、裂肛が最も疑われるので、早く肛門科を受診しましょう。
手術が必要になった場合でも、たいていのものは日帰り手術で治せます。
手術の方法について知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
http://blog.dr-ok.com/201210/article_6.html

血栓性外痔核の手術適応

肛門の外に血栓(血の固まったもの)ができて腫れた血栓性外痔核の場合、皮膚に麻酔してちょっと切開すれば血栓を取り出す事ができます。
しかし、それが意外と難しい。

腫れているときは肛門の外にあるように見える血栓も、本来の位置は肛門の中であることも多いのです。
こんな場合に、大きな切開をして血栓を取り出すと、傷は肛門の中に残ることになり、なかなか治らない『難治創』になってしまう事もあります。
血栓摘出術は、よほど慎重に適応を選ばなければなりません。
ほっておいても、いずれは治る病気ですからね。

激辛料理にご用心

痔の患者さんに辛いものは良くないというのはよく聞く話で、「激辛の韓国料理を食べたら、出血した」とか「タイ料理を食べて、おしりが腫れた」という患者さんを診察したこともあります。


これは、辛みの成分が消化吸収されずに便に混じって出てくるのが原因と言われていますが、特に激辛食品を好む国で痔が多いという話も聞いた事がないのは民族的な体質の違いにあるのでしょうか?


ちなみに、私はクリニックの二軒隣りにある四川料理屋の石焼麻婆豆腐の辛口を食べても異常なし。
自信のある方は、自己責任でお試しください。
http://www.chin-z.com/cgi-bin/chin-z/siteup.cgi?category=4&page=5

肛門部粉瘤種

「おしりにしこりがある」と言われ、考え付くものに肛門周囲膿瘍(化膿して膿がたまっている)、血栓性外痔核(血液が固まって血豆を作っている)などが多いのですが、忘れたころにお目にかかるのが粉瘤種。
これは、体のどこにでもできる『皮膚良性腫瘍』で、カプセルの中に垢のようなものがたまる腫れものです。
当然、肛門周囲の皮膚にもできて、ふつうは痛くないのですが化膿すると膿がたまって痛みます。
局所麻酔の簡単な手術で治りますから、ご安心を!(^^)!

2014年5月26日月曜日

続・肛門出血

『赤い肛門出血は痔で、黒っぽい肛門出血は癌』
という都市伝説が間違っていることは前回説明した。
http://akbsc.blogspot.jp/2014/05/blog-post_8909.html

では、癌や痔以外の肛門出血には、どんなものがあるだろう。

最近よく見かけるのは、直腸炎。
肛門出血があるから、念のために大腸内視鏡検査をすると、肛門から数㎝の直腸粘膜がただれて、これが原因で肛門出血となっていることがある。
組織検査を行うと、潰瘍性大腸炎と診断されることもあるので、要注意である。
潰瘍性大腸炎であったら、それの特効薬を使わないと大腸全体に広がっていくことがある。
そうなると、肛門出血以外にも、下痢、腹痛、発熱など、さまざまな症状がおこり、最終的には大腸全摘出術を行う必要が生じる恐れもある。

それ以外の肛門出血としては、肛門の周囲の皮膚がかぶれて湿疹となり、かゆいのでかきむしって小さな傷が生じて『紙に血が付く』という程度の肛門出血をきたすことがある。
この場合は、便や汗が原因でかぶれているなら、排便後の肛門洗浄を行い、湿疹用の軟膏で治療する。かゆみを止めるための、抗アレルギー薬も有効である。

肛門出血

肛門から出血すると、誰でもドキッとするものである。
まさか、癌では・・・
「赤い血は痔で、黒っぽいから癌だ」
とかたくなに信じて、自分の肛門出血は『赤いから痔に違いない』と高をくくって、手遅れになる患者さんが後を絶たない。

肛門出血は、血管から血が出てから気づくまでの時間で、色が変わってくる。
確かに、大腸の奥の方から出血した場合、肛門出血となるまでに時間がたっているから、黒っぽくなる場合が多い。
しかし、大部分の場合、便に交じってしまうので、肛門出血として認められることの方が少ない。

確かに、赤い色の肛門出血の大部分は『痔』からの出血であるが、肛門に近い直腸癌も、まさに肛門に発生する肛門癌も、赤い色の肛門出血を認める。

色だけで判断せず、肛門出血があったら痔と大腸の専門医にかかって、一度は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めする。

ちなみに、肛門から出血しているなら、保険診療(三割負担の方で7~8千円)で受けることができる。

痔の専門医の見つけ方

痔は専門医にかからないと、とんでもないことになる可能性については先に書いた。
http://akbsc.blogspot.jp/2014/05/blog-post_4040.html
では、どうやって専門医を探したらよいだろうか。

最近では、日本で唯一肛門病を扱う学会『日本大腸肛門病学会』の専門医を掲げ『痔の専門医』であることを明確にする医師も多い。

日本大腸肛門病学会の専門医制度は、国民の皆さんに安心してかかれる大腸疾患や痔の専門医を紹介するためにこの制度を作った(はずである)。
一定の診療経験を納めた書類に書いて提出し、さらに学会発表や医学論文の有無なども評価に入れて、そのうえ試験を受けて合格したものだけが専門医の資格がいただける。
さらに修練を積むと、指導医となって後進の指導に当たれる資格もいただける。
これらの、専門医・指導医の資格は永久資格ではなく、5年に一度の更新手続きがいるから、その間も、診療経験、学会活動など、さぼっていると資格を失ってしまう。

では、日本大腸肛門病学会のホームページに掲載されている専門医であれば、痔の専門医と言えるであろうか?
http://www.coloproctology.gr.jp/doctor/

答えはNoooooo!!!である。
実はこの専門医制度には大きな欠陥がある。
大腸肛門病の学会だから、大腸がんを専門にしている医師、潰瘍性大腸炎の内科治療を専門に行っている医師も大勢いるので、試験の内容(診療経験の有無)も
大腸外科、肛門科、内科その他
の三本立てで、専門医であっても痔の手術は一回もやったことの無い『日本大腸肛門病学会専門医』もいるのである。
流石に、痔の手術の経験がない内科の医者が手術を行う事は無いだろうが、肛門科を標榜して診察と薬の治療だけ行って、手術が必要と判断したら痔の専門医に紹介するというスタイルで流行っている医療機関もあるのは事実なのだ。

確かに手術は行わないから、大した問題は生じないと思えるかもしれないが、一回も手術を経験したことの無い医者が、『痔の専門医』として手術適応を正確に決めることができるのだろうか?
安易に手術を勧められて、必要のない手術を受けて後遺症に悩む患者さんがいるのではないか?

以前、この問題を学会の評議員の集まりで発言したことがある。
その時は、
「一般外科の医者で痔の診療を行っている人が『痔の診療はできない』と思われては困る」
という理由で議論にもさせてもらえなかった。

確かに、癌などの大きな外科の手術を引退し、痔の手術で生計をたてている医者にとっては死活問題であろう。
それだったら制度自体を改正し、大腸外科、肛門科、内科その他、の三本立てにして、複数取得が可能な制度にすれば、丸く収まるのではないだろうか。

専門医制度は『医者の利益のためだけでなく、患者さんの利益のため』にあってほしいと願っている。
安心して痔の専門医を見つけられる時代が来るだろうか?

痔の治療

痔の治療は、いったいどこの病院で行われているのだろう。
看板に『肛門科』と書かれていたら、痔の治療を安心して任せられるのだろうか?

答えはNo.
日本の医療では、自由標榜性といって『医師免許を持っていれば、どんな診療科を標榜してもよい』
という、摩訶不思議な制度がある。
ちなみに、赤ちゃんを一回も取り上げたことの無い私が『産婦人科』という看板を出して開業することも制度的には可能である。
おそらく、医師が圧倒的に不足していた時代「とにかく、何かの医者でも医者に見せたい」という国民の要望から作られた制度が、その後、既得権の問題もあり改正されないのではないかと思う。

それだから、『ついでに痔の患者さんも診ておこう』という安易な考えで、専門外の肛門科を標榜して痔の治療をしている医療機関も多く、肛門の診察をしないで座薬だけ出して、それを持って『痔の治療」としている医師もいるのはゆゆしきことである。

私の経験でも、排便時に肛門痛みがあるということで、おそらく内科医が標榜した『肛門科』で半年間痔の治療を受けた患者さんが「全く良くならないどころか日増しに痛くなる」という事でやってきたことがある。

どのような痔の治療を受けていたか尋ねたところ、肛門に指も入れないで座薬だけ処方されていたとのこと。
私が、人差し指一本入れただけで、肛門癌であることがわかった。
ちゃんと肛門指診という、肛門科診療の基本診察を行えば、このような間違った痔の治療で一刻も手術が必要な肛門癌の患者さんの貴重な時間を奪う事はなかったと思う。

痔の治療を行うなら、肛門の専門家にかかるべきである。
せっかく、日本の保険医療を使って痔の治療を受けるなら、専門医も『なんちゃって肛門科』も、同じ診察料であるメリットを使わない手はない。

日帰り手術の危険性(術後出血)

痔の手術の主流は入院手術であるのはなぜだろう。

胃の手術だったら、術後絶食の期間があるから、高カロリーの点滴を大量に行う必要がある。
脚の骨折の手術だったら、術後痛くて、しばらく歩けない。
何より、大部分の大きな手術は、身体的負担が大きいから、これから回復するのに時間がかかる。

痔の手術は、特に全身状態が悪くなるわけでもなく、比べるとすれは歯を抜くのと同じくらいの身体的負担ともいえる。
「痛みさえ我慢できれば、病院で寝ていても、自宅で寝ていても同じじゃないか!?」
「ベッドを埋めて、病院経営安定のためか?」

実はそうなんですそういう面も全くないとは言えないのですが、大きな理由は術後の出血にあります。

特に痔核の手術は、血管の塊である痔核を切除するわけですから、出血が始まったらハンパないこともある。
1000ml位あっという間に出て、トイレは血の海。
時には、失神する人もいる。
当然、救急車を呼んで病院を探すことになる。
それも、よりによって深夜に!

日帰り手術を進められたら、深夜に大出血した時の対応を医師に聞きましょう。

ちなみに私が院長をやっている『秋葉原サテライトクリニック』は、入院設備のある『西新井大腸肛門科』の分院ですから、そこで24時間体制で出血の患者さんを受け入れる準備はできています。
と言っても、年に1回あるかないかのことですけど・・・

2014年5月25日日曜日

あな痔ってなんだ?

肛門の周りに小さな穴が開いていて、そこからいつも汁や膿が出る。
時々、腫れて痛む。
という症状を持つ病気が『あな痔』(痔ろう)である。



あな痔は、手術しないと治らない。
というのが、医学的な常識となっているが、もちろん奇跡的に治ってしまうこともある。
ただ、一か月以上治療しても治らなければ、早々に手術した方無難。

膿がたまると腫れて痛むのは、爆弾を抱えて生活しているようなもの。
人生の「ここぞ」というときに限って、肛門が腫れて座ることもできなくなったら、生き地獄である。

それに、あな痔を放置しておくと、腫れた後に枝分かれして、複雑なあな痔になってしまう。
複雑なあな痔は 、手術をしても大きな傷をつけることになるので、手術後の肛門の機能が低下する危険性もある。

さらによくないことは、複雑なあな痔から稀に癌が生じることがある。
肛門に癌が発生したら、肛門と直腸を合併して手術で切り取る必要ああるから、人工肛門は免れない。

あな痔が確定したら、手術を覚悟した方が良いという事です。

切れ痔って何だ?

良く患者さんが『肛門が切れて…」と言って外来を受診しますが、肛門の中を診ても、どこにも切り傷はない。
よくよく聞くと、血が出たことを『切れた』と言っていることが多い。

実際に肛門が切れた場合に限って『切れ痔』(裂肛)と定義したい。



切れ痔ができるのは、肛門の皮膚と直腸粘膜の境目が1.5㎝位にあって、そこより外の肛門の皮膚の部分に傷ができたものを裂肛と言います。
この部分は、痛みを感じる神経があるので、切れれば当然痛い。

痛くないのに『切れた』という患者さんは、裂肛ではない!
と断定できるのであります。

いぼ痔って何だ?

いぼ痔を医学的に言うと『痔核』である。
肛門の皮膚と直腸粘膜との境目(歯状線)が、1.5㎝位にあり、そこより中にある血管(静脈叢)が集まったところが膨れたものは、内部の「いぼ痔」という事で、内痔核という。
その境目より外にある血管の集まりが膨れたものを、外部の「いぼ痔」という事で、外痔核という。





どうしてそんなところ血管が集まっているのだろうか。
将来的に立派な大きな「いぼ痔」になって、一人退屈にウ〇コをしているときにぴょこんと肛門から顔を出し

「いよっ大将!人生に退屈してますね。退屈は人生の敵。老化防止においらが一役果たしましょう」(,_’☆\ バキ

と思っているわけではない。

大切な役割として、肛門のパッキンの役割をして、水のような便でも漏らさないようにしているのである。
だから「憎っくきいぼ痔め!」と徹底的に手術で取れば、二度といぼ痔はできないけど、パッキンの故障した水道みたいに、水漏れを起こす可能性があるのです。

2014年5月24日土曜日

座薬の簡単な挿入法

肛門から入れる座薬。
肛門の皮膚が乾いていると、意外に摩擦が大きくて入れにくい時があります。
そんなときの裏技として、ハンドクリームや、食用油などと先端につけると容易に入れることができます。
いざ、トイレの中で入れようとして困ったときは、唾をつけてもOKです。(^^ゞ

軟膏の正しい使い方(裂肛編)

 
裂肛(切れ痔)は、肛門の壁にできた傷で、大部分が薬の治療で治ります。
特に効果が期待できるのが痔の軟膏なのですが、傷につけることを考えずにやみくもに肛門内に注入している人がいます。

裂肛の傷は、肛門から入って5~10㎜位の場所にできていますから、先端がストロー状になった痔の軟膏を使う場合、先端を肛門に当てるか5㎜程度差し込んで注入し、軟膏が肛門の外に漏れるくらいが正解。
深く差し込んで、傷より奥の直腸の部分に注入しても、括約筋でしまっているので軟膏は傷まで広がってきません...
裂肛について詳しくは
http://blog.dr-ok.com/201210/article_1.html
を参考にしてください。

完全閉鎖式結紮切除術

日帰りの痔核の手術を、痛みや出血を少なく行う工夫として、手術の傷を確実に縫い合わせる術式があります。
今までの常識とは違った、完全閉鎖式結紮切除術についてブログで解説しました。
http://blog.dr-ok.com/201403/article_3.html

痔は切らなくちゃ治らないのか??

痔の病気のうち、約半数を占めるのが痔核(いぼ痔)です。
出血や腫れの症状は薬の治療が主体。
なぜなら、手術を行えばそれだけ排便機能に影響を及ぼす恐れがあるからです。
それでも、脱出してくる痔核に対しては手術が必要な事も多く、いかにして排便機能を損なう事のない手術をするかが、腕の見せ所なのです。
そのような、機能温存を目指した痔核の手術の解説を、ブログで始めました。
病変部の写真も遠慮なく掲載していますから、気分の悪くならない自信のある方のみ、閲覧してください。
http://blog.dr-ok.com/201403/article_1.html

肛門マッサージ

排便後脱肛する患者さんに、シャワートイレの水流によるマッサージで元にもどす効果はあると思いますが、電動マッサージ機による痔の治療についての効果は医学的には不明です。

痔の治療のために、肛門に電動マッサージ機を入れて取れなくなった患者さんの記事です^^;
http://rocketnews24.com/2014/02/25/417291/

痔核手術のビデオ

痔核の手術で現在一番行われている術式は『結紮切除術』という、痔核を一つずつはがし取るように切除する方法である。
その中でも、切除した後の傷を融ける糸で縫い合わせる『閉鎖式結紮切除術』は、術後の痛みや出血を予防する効果が高いことで、多くの肛門科専門医が行っている。

ただ、この閉鎖式結紮切除術は、どのくらいの範囲で痔核を切除するかとか、どのくらいの深さで切除するかなどの、経験を積まないとなかなか会得できない手術方法で、学会などでも『熟練を要する』などという冠を付けて紹介されることが多い。

しかし、この手術が日本で紹介されてから半世紀ほど経った現在、いまだに『熟練者の手術』に甘んじていては、標準術式とはなりえない。
痔のようにありふれた病気を、普通の外科的手技を会得している医者ができなくては、『肛門科専門医の怠慢』とのそしりを受けても文句は言えないだろう。

そこで私が開発したのが『だれでもできる結紮切除術』である。
だれでもできることを、『サルでもできる』というパソコン業界の隠語を使って『サルでもできる結紮切除法』略して【サルケツ】という検索ワードを作り上げた。

血を観るのが苦手でない方は、下記のURLから手術のビデオを観ることができます。
http://youtu.be/zKAYk7AAtjk

大腸がんの予防は内視鏡にあり

大腸癌の予防には『早期発見が重要』という趣旨の番組がNHKで放送されました。題して
【大腸がん!99%発見法 スゴ腕ドクターに聞け】
http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20140122.html#0

かねてから私は
『大腸がんの治療に携わる医者で、一番偉いのは、患者さんに内視鏡検査を受けることを納得させた医者である』
という持論を持っている。
大腸がん治療の成否をにぎる最大のカギは、『いかに早期に、大腸がんを見つけるか』という事にかかっている。

周囲組織に広がったり、肝臓や肺などの多臓器に転移してしまった大腸がんは、世界一の名医にかかったところで、完治できる可能性は低い。
その反面、早期胃がんだったら「一応、大腸がんの手術もできます」程度の『駆け出し外科医』が手術しても、完治できる可能性は極めて高いからである。

だから、検査を躊躇する患者さんに「口八丁」でもいいから、大腸検査予約を入れさせた医者が一番エライ!!!

「おしりから出血した」「最近、便通がおかしい」「お腹が張る」などの症状にお気づきの皆さん、一度は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
ちなみに当院では、上記の症状があれば保険診療で検査ができます。
費用は、おおむね7000円~8000円(三割負担の場合)です。

手術の後遺症

患者さんに手術の説明をすると
「先生、手術をしたら括約筋を切られて、便が漏れるようになる事があるって聞いたんですけど・・・」
と、心配そうに質問される患者さんがいらっしゃいます。

どうも、患者さんの頭の中には「痔は治ったけどオムツつけて生活をしている人」というのが思い浮かぶようです。

痔の手術といっても、病気によっていろいろで『括約筋を切る』というのは痔ろうの手術が主体で、一番多い痔核(イボ痔)の手術では、括約筋には全くノータッチ!
どちらかというと、痔核をとりすぎて傷が治った後狭くなってしまう方がよっぽど多いのです。

とり足りなくても再発するし、取りすぎたら狭くなる。
『さじ加減』が重要なのは、手術でも同じなのです。

かい~の!


有名な間寛平さんのギャグである。何の脈絡もなく、柱の角なんかにおしりを押し当てて「かい~の!」
これ一発で、場内大爆笑である。

閑話休題。
肛門科には「おしりがかゆい」という訴えで受診する患者さんもいらっしゃいます。...
ほとんどの場合、便や汗によるかぶれなので、排便後洗浄して湿疹用の軟膏で治療することで軽快します。

最近、皮膚科にも造詣の深い佐々木みのり先生(大阪肛門科診療所)が「洗いすぎによる肛門のかゆみ」に警鐘を鳴らしています。
洗いすぎることによって肛門皮膚の皮膚のバリアー機能が低下し、かゆみの症状や感染症を誘発するとのこと。

詳しく知りたい方は
http://ameblo.jp/drminori/entry-11743557167.html
をご一読くださいm(__)m

2014年5月23日金曜日

痔の日帰り手術

最近、痔の手術を日帰りで行うクリニックが増えている。

実際、痔の手術は全身にダメージを与えるようなものではない。
手術だけ考えたら、当然日帰りであっても可能である。
では、なぜ入院州術が必要なのか。

一つは、手術後の出血の問題がある。
痔の手術は、傷を縫ったところで、毎日排便することで安静が保てず、バイ菌だらけの便で汚れるので、普通の傷を縫うように『一週間もすればきっちりくっついて治ってしまう』というものではない。
時に、治る途中で傷が開き、大出血することがある。
救急車を呼ばなくてはならないくらいの出血もある。

二つ目の理由は、痛みや腫れの予防である。
肛門は、立ったり座っていると血液がたまりやすく腫れる傾向がある。
術後の痛みを最小限にするには、なるべく長期間横になっていることが効果的である。

出血や腫れを少なくするために、日帰り手術では軽い痔を手術するか、大きなものは『控えめに』手術をせざるを得ない。

安全、快適、確実を求めるなら、入院手術に勝るものは無い。

秋葉原の肛門科

痔と言えば、肛門科を受診するのが定番だが、本当にそれでいいのだろうか。
まず『肛門科』という看板をあげている病院があったとしても、本当に肛門科専門医がいるところは少ない。
外科が、片手間にやっているような肛門科では、中には器用な医者もいるけど、きちっと勉強した医者がいることはまれである。

私(奥田)は、大学を卒業して5年間の間、一般外科として診療した。
頭から順に、甲状腺、食道、胃、胆嚢、すい臓、肝臓、乳腺、小腸、大腸と様々な手術を修練し、その中で指導教官もよくわかっていなかったのが『痔の手術』であった。

外科医なら必ず執刀する『痔』の手術も、納得いくテクニックを身に着けたいと考え、再度研修医の身分となって就職したのが【社会保険中央総合病院大腸肛門病センター】である。

この施設は、全国から痔の手術を学びに医者がやってくるような施設で、他の痔を扱う専門病院と違うところは、大腸の手術や大腸内視鏡も専門として学べるところにあった。
『痔だと思っていたら、大腸がんであった』という悲劇を生みださないように、両刀遣いを目指したのである。

秋葉原で肛門科をお探しの方は、ぜひ肛門科と大腸の診療が同時に行える『秋葉原サテライトクリニック』http://www.ok2.or.jp/akihabara/をごひいきに。

肛門科ってどんな科

泌尿器科とか産婦人科とか、いわゆる『シモ』を扱う診療科の一つに肛門科がある。
肛門科だけ特別なのは、前二つの診療科が大学の講座として存在しているのに対して『肛門科教授』がいないことでわかるように『肛門科』という大学の講座はない。

いったいどうして、だれでもかかる病気である痔を取り扱うのに、大学の講座はないのだろう。

その一つとして、痔の診療は外科の中で片手間に行われることが多く
『アッペ(盲腸の手術)、ヘモ(痔)、ヘルニア(脱腸)はウンテン(ドイツ語で下っ端の意)の仕事』
という、伝統的な認識があるからだのである。

確かに痔は、命にかかわるような病気ではないので、卒業間もない医者に任せられることが多い。
それゆえ、いつまでたっても技術的に向上することが難しかったのだが、最近は専門家を目指して肛門科の修練を積んでいる医者も多くなったのは、日本の『痔主』にとって幸せなことと言える。

手術をすると・・・

患者さんに手術の説明をすると
「先生、手術をしたら括約筋を切られて、便が漏れるようになる事があるって聞いたんですけど・・・」
と、心配そうに質問される患者さんがいらっしゃいます。

どうも、患者さんの頭の中には「痔は治ったけどオムツつけて生活をしている人」というのが思い浮かぶようです。

痔の手術といっても、病気によっていろいろで『括約筋を切る』というのは痔ろうの手術が主体で、一番多い痔核(イボ痔)の手術では、括約筋には全くノータッチ!
どちらかというと、痔核をとりすぎて傷が治った後狭くなってしまう方がよっぽど多いのです。

とり足りなくても再発するし、取りすぎたら狭くなる。
『さじ加減』が重要なのは、手術でも同じなのです。

恥ずかしい体位

facebookで肛門科の間で話題になった、『肛門科医の診察シュミレーター』がこれ。

衝撃な写真でスミマセン。

肛門科に行ったら、どんな恥ずかしい体位で診察されるのか心配な方、この写真のような体位が日本の肛門科病院で採用されているという話は聞いた事がありません。

ちなみに、秋葉原サテライトクリニックでは、左下横向きで、やや前方に傾け、膝をかかえ、右脚を少し強く曲げる『シムス体位』を採用しています。

すぐに切らなきゃいけない痔【尖圭コンジローマ】


これは、ウイルスによってできるいぼです。
最近は、このウイルスに効く軟膏がありますが、この軟膏は夜つけて朝に洗い流す必要があるので、肛門の中までイボがあるとうまく治療できません。

放置していると、だんだんイボの数や大きさも増え、稀に巨大化して癌になる事があるので油断は禁物です。

詳しくは下記をご覧ください。
http://blog.dr-ok.com/201301/article_1.html

すぐに切らなきゃいけない痔【肛門周囲膿瘍】


肛門周囲膿瘍は、肛門の中からバイ菌が侵入し、膿がたまる病気です。
痛みは徐々にひどくなり、我慢していると皮膚が破れて膿が出て楽になります。
その後、バイ菌の入り口と膿の出口がつながって残ると、痔ろうになります。

運が悪いと、は奥の方に広がって行って、ついには体中に回って敗血症という命にかかわる病気になる恐れがあります。
そうならないためには、早めに皮膚に切れ目を入れて膿を出すことです。

肛門周囲膿瘍と痔ろうについては、下記をご覧ください。
http://blog.dr-ok.com/201209/article_1.html

レーザーメスは有用か?

『レーザーメスを使うと痛くない』とか『出血が少ない』と言う話が昔からありますが本当でしょうか?
結論から言うと
『大腸肛門病学会では、まったく話題になっていない』
という事です。

すなわち「痔の手術で使用して痛みが少なかった」という科学的根拠のある論文はないし、出血についても通常の採血程度の出血しかないのですから、目くじら立てて出血量を減らす必要もないわけです。
それに、レーザーメスの価格も他の高価な医療機械と比べてるとそれほど高いものでもなく、
http://www.lesac.jp/about/
本当に効果があれば、全国の肛門科がこぞって買うでしょう。
!(^^)!
要は『腕の問題』なのです。

痔と間違える癌②


「トイレのたびに、痔が出てしまって、もう我慢の限界です」
と訴えてくる患者さん、すぐにでも手術をして欲しいと言う。
診察すると、見事な脱肛。

「ちょうど来週の手術予定にキャンセルがありましたから、どうでしょう?」
「願ってもない事、お願いしますっ!」

なんて調子でトントン拍子で手術が終わってしまった患者さんが「いつになっても出血する」と訴える。
念のために大腸内視鏡検査をすると、直腸の指が届かないところに大きな直腸癌があった。

こんな経験は、肛門科の医師ならたいていの人に身に覚えがある事なのです。
当院では、手術患者さんにはもれなく大腸内視鏡検査をお勧めしています。

2014年5月19日月曜日

痔と間違える癌①

「排便のたびに出血して痛みがひどい」
という訴えで患者さんがやってきました。
お話を聞くと
「近所の内科で症状を説明したら、診察は行わずに座薬を半年間処方された」
との事。

指を入れただけで、一瞬で診断できました。
【肛門癌】だったのです。

どんな名医でも、診察なしで正確な診断はできないのは当然ですよね。

痔ろうは癌になる?

正解を先に言うと『稀に癌になるものがあります』です。
問題になるのは痔ろう。
これは、肛門の中からバイキンが入って膿んでいるもので、膿の出る小さな穴が肛門の周囲にできます。複雑な痔ろうを何年も放置していると、そこから『痔ろう癌』という、非常に悪性の癌が発生することがあります。
痔ろう癌が発生したら、直腸から肛門まで切断する手術が必要になり、人工肛門をつけなくてはなりません。
痔ろうの場合は、可及的早期に手術で治すことをお勧めします。

ジオン(ALTA)は万能か?

『痔を注射で治す』という【ジオン】という注射薬があります。
内痔核には痛みを感じる神経が無いので、そこへ注射して炎症を起こし、治ってくる過程で傷が固くなる現象を利用して痔核を固めて縮ませる効果があります。
ジオンの【効能・効果】は『脱出を伴う内痔核』です。
http://di.mt-pharma.co.jp/file/dc/zon_b.pdf

症例を選んで適切に注射すれば、日帰りでも行えて、翌日から内痔核の脱出から解放されるという画期的な治療法です。

ただ、注射方法が不適切だったり適応の無いものに行うと、再発したり注射後に肛門が狭くなったり、思いもよらぬ後遺症に苦しむことになります。

ジオンの適応外であったら「何が何でもジオンで治療しよう」とせず、自信を持って手術を選択できる技術が必要なのです。